東海道新幹線の走行音のレコード

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こんにちは。オタクです。オタクなので色々なものを所有しております。

今日ご紹介するのは、東海道新幹線の音を収録したレコード「日本の鉄道 200km/h 東海道新幹線」です。

古いものが好きで鉄道も好き、レコードも好きで昭和の日本ではどのような環境音が聴けたのかなど非常に興味のある分野が1枚に凝縮されたようなこのレコード、見つけたその瞬間に購入を決意しちゃいました。

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収録されているのは1966年4月23・25日に東京駅と小田原駅で録音された音。裏面に解説文が載っているので以下に引用します。

夢の超特急と待望されていた東海道新幹線も開通してもう1年半以上を経過し、すっかり板についてしまった感じである。ことに昭和40年11月からは東京-新大阪間3時間10分運転が実現し、1日55往復のほか臨時列車も多数運転されて、東京駅のホームは空っぽになる時がほとんどなく、目下16番線が増線工事中で発着線が4線になろうとしている。
見なれているものものも気づかないうちに、刻々とその姿を変え、いつの間にか思い出のかなたに消えて、新しいものも、その姿を保っていることがまずない。開通当時あった昼間の静寂はもう見られない。
その意味で新幹線なども、いわゆる鉄道マニアのためばかりでなく広く一般を対照として、今記録しておくごとが、あとになって思わぬ喜びになるであろう。

録音から54年、正にここに喜んでいる人がいます。本当にありがとうございました。

東海道新幹線は開通前後は非常に盛り上がったようで、未だにテレビで新幹線の話題が出るととりあえず東京駅での開業セレモニーのモノクロ映像が流れるイメージがありますが、翌年翌々年以降の資料はこれっぽっちも出てきません。また話題に上がるのは1970年の大阪万博開催に伴う大量輸送や1972年の岡山延伸くらいのものでしょう。

開通後から万博までの間、つまり夢の超特急が夢では無くなった世界というのは、もう進んで記録するものでは無くなっていたと思います。

そんな中で発売されたのがこのレコード。解説文の通り、1966年当時すっかり板についてしまった東海道新幹線。東京駅を毎時2本、ひかりとこだまが交互に出ていてそれ以外の時間は東京駅なのに静寂に包まれていた場所が、ほんの1年半で増発が繰り返されスピードも上がり更には増線工事までしているという、目まぐるしい成長が伺えます。

計画発表当初は世界三大馬鹿だのなんだの言われた高速鉄道も蓋を開けたら大成功を収めたわけです。

で、具体的に何が録音されているのかを同じく解説文から引用します。

A面
1. 東京駅新幹線ホームは16番線の増設工事の最中でなんとなくざわついている。発車のアナウンス、ベル、タイフォーン、ドアが閉まる。19番線から「ひかり19号」がすべるように発車していく。 非常に軽快に見えるが実質的には定員乗車で1両が約60tもあるので、ずっしりとした重量感が録音されている。
2. 到着を告げるアナウンスがすむと「ひかり19号」の発車した後の19番線に11:00定時に「ひかり6号」が到着する。
3. 小田原駅新幹線下りホーム。駅のアナウンスのなかを14:47「こだま361号」名古屋行が到着。ドアが開く。発車のベル、ドアが閉まる。発車。パンタのすれる音。遠のいて行くと見送人の下駄の音が階段をおりて行く。
B面
1. 小田原駅通過の「ひかり25号」。まったく一瞬間、ヒューッと飛ぶように通過して行く。
2. 150mほど先に見えるトンネルでトンネル警報(電車の接近を知らせる)が鳴り始める。近くの中学校の騒音、自動車のクラクション、すぐ下の線をゆく小田急HE車の警笛や渡り線での車輪のきしりがはいった瞬間、「ひかり24号」が通過。
3. 11:00に熱海を出た「こだま111号」は新丹那トンネルの中で上り「こだま352号」とすれ違う。トンネルを2/3ほども過ぎたころか、光の玉が近ずいたと見る間にピューッピュッピュッと時速200kmどうしのすれちがい。これは「ひかり111号」の運転室での録音である。
4. 小田原-熱海間における「こだま111号」のビュッフェにおけるスナップ。
5. 「こだま114号」の2等客車内。静岡-熱海間で採録。無味にも近い変哲のない音、これが新幹線だ。

A面の1トラック目から既に激ヤバな資料。当時の東京駅でどのような音が流れていたのかが鮮明に記録されていて素晴らしいの一言です。発車ベルとは別にウエストミンスターの鐘が入っているのが気になります。当時のダイヤは1965年11月1日改正、1966年3月10日修正のもので、ひかり19号は11時00分発。毎時00分に時報として流していたのでしょうか?

2トラック目はひかり6号の到着。19号が出たホームに入れ替わりで到着しているようです。当時の時刻表が見たいですね。

3トラック目、小田原にてこだま361号の発着。こだま361号は3月10日から設定された東京駅14時5分発の臨時列車です。1966年時点で00分発ひかりの5分後にこだまが出ているあたり、既に現在のダイヤの原型が出来上がりつつある様子が見て取れます。

B面1トラック目。エラい轟音でした。音だけで伝わる0系12両編成の重量感は半端じゃないです。

2トラック目も通過音。トンネル警報の音が入っているのが高評価ポイント。こういった些細な音まで入っているのが記録レコードの醍醐味です。

3トラック目も迫力満点。綺麗にすれ違う時の音が入ってます。窓開けてたんですかね?また、「光の玉が近ずいた」というのは当時まだアクリル光前頭を装着していた編成が残っていた事の証拠でしょう。前照灯の間にぼんやり光る光前頭、トンネル内ですれ違う時は文面通り「光の玉」に見えた事でしょう。

4トラック目、どういう着眼点だよと思うビュッフェでの環境音。コーヒーカップのカチャカチャした音と乗客の微かな雑談が記録されていました。今の新幹線からは失われた音です。

最後の5トラック目は2等客室、今の普通車での様子。こればかりは今ののぞみに乗っている時となんら変わらない気がします。


というわけで、ただの「音」を記録したレコードですが、臨場感あり迫力ありで新幹線が好きなオタクなら聴くべきなんじゃないかなと思う内容でした。

この他に走行音を記録した「新幹線 ひかり 19A」というレコードも探しているのですが、全然出て来ず。いつか手に入れたいものです。



余談ですが、この音の収録日である4月25日にひかり42号が車軸を折る事故を起こしてます。